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あえばさんのブログです。(※ブログタイトルはよろぱさんからいただきました)
レビュー・感想・紹介
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※以下はネタバレを多大に含んだ感想となっています。ご注意ください。


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『胎界主』というweb漫画がゲロ面白い。
商業・同人の区別なく、今まで読んだ漫画の中でトップクラスに面白いと断言できる。
すでに5年近く連載していて、フルカラーで独特の色彩感覚と世界観。
現在も3日に3枚の更新ペース。もはや人間とは思えない。
実はこの漫画を知ったのはずいぶん前で、面白さに気づいてからもだいぶ経つのだが、今になって記事を書くのはどう紹介していいかわからなかったからだ。

まず、この漫画は極度の初見殺しだ。敷居は高い。
僕自身も「ある程度」理解できたと言えるまでに三周ほど読まなければならなかった。
設定や登場人物がまとめてあるwikiと併読した。
それでも簡単には理解できないし、完全に理解できたとも思えない。
逆に言えば、何度も何度も読むことで理解が深まり、世界が開けていく快感を味わえる希有な漫画といえる。

一周目はただわけがわからず、ほとんど苦痛としかいえなかった。
二周目になるとじょじょに各々の勢力関係や思惑・暗躍が把握できるようになり、「こりゃあと一回読まねばならん!」となった。
三周目になると細かい設定なども呑み込め、それぞれのキャラクターに感情移入できるようになり「これは何度でも読める麻薬だな」という境地に至った。
今はじっくり四周目を読んでいる。


この漫画のなにが面白いのか。
人によって解釈や着目点が変わってくるだろう。
まずはその視野の広さ、世界観の広さがある。
僕が挙げるのは「物語が誰の思い通りにもならない」点だ。
様々な勢力が様々な思惑をもって複雑に入り乱れる。
各々持ちうる情報はかぎられており、各々がその中で最善手を打つ。
行動を共にする「仲間」でさえその動機はまったく異なっている。
「すべては○○の陰謀だったんだよ!」といった感じに単純化できず、「○○と△△と□□の思惑が交錯した結果」とでもいうような。
そして、誰彼もその思惑の全容を知っているわけではない。
なにもかも思い通りとニヤリと笑う黒幕はこの漫画には登場しない。
こういった複雑でリアリティのある作品はそうそう描けるものではなく、そうそうお目にかかれるものではない。
そして、それゆえに非常に難解で、奥深い作品となっている。
(初読時には登場人物が事態の全容を把握できていない感覚を追体験できるだろう)

ただし、漫画としての非の打ち所ならいくらでもある(主にわかりにくさ)。
しかし、それを補って余りある面白さがある。
人に勧めるのに際し、「わかりにくいけど、わかれば面白い!」という文句はいくら言っても言い過ぎではない。
二周以上読むことはおそらく必須で、というか二周でもまず足りないだろう。
その難解を乗り越えるだけの価値はある、しかし「これから読もう」という人にそれは少しハードルが高すぎる。
少しでもハードルを下げるため、「なぜわかりにくいのか」がある程度わかっていれば理解の助けになるのではと思い、ここに列挙する。

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なんか評価高かったので読んでみたけど、感想としては一巻はそこそこ面白かったけど、二巻で残念な展開。

まず褒めると、この作品の最大の見所(?)である物言わぬ巨人の不気味さはすごい。
人間と同じような顔して笑ってるんだけど、その笑みがホント怖い。
普通の人間、普通の悪役だったらこういう表情でサディスティックな台詞を口にするんだろうけど、そういった台詞は一切ない。
単なる脅威によるの恐怖だけでなく、表情から感情が読み取れない恐怖がある。
また、人類をただスケールアップするだけでなく、筋肉や骨格を歪ませることで異質感を出している。重量感も見事。
ただ、主に肋骨の構造がちょっとイミフすぎるかなあという感もある。
他には、正面からの攻撃には頭吹っ飛んでも再生するけど、弱点を傷つけるとたちまち溶けて死ぬって設定はちょっとご都合主義すぎると思った。(キャラにワイヤーアクションをさせるための口実)
まあ、でもこの設定ないと話が全然盛り上がらないから仕方ないとは思うけど。
キャラはミカサがかわいい。

次に不満点。
ネタバレを抑えて書くと、二巻で起こったあの展開。
最初は「おお!」ってなったけど、途中でどういうことかはわかってしまって「おいやめろよそういう展開やめろよ」ってなった。
あれは最後までどういうことなのか全然わからんって方が巨人も一枚岩じゃないってことになって話に深みが増したんじゃないかなあ。
もちろん、なにかしらの解釈というか説明は必要だとは思うけど、あくまであれは例外的で一時的でイレギュラーな事態だった、という方が個人的にはよかった。
ファンタジーなのは巨人の生態だけで、それ以外はリアル路線で貫いて欲しかったところ。
まあ、三巻以降どうなるかにもよるけれど。

というか、もうネタバレになるけど、死ぬ死ぬ詐欺はマジ勘弁。
「死んだ!」と思ったキャラが「実は生きてた!」「生き返った!」って展開は緊張感が損なわれるので激萎えです。
そのキャラに思い入れがあれば生きてて嬉しいって場合もあるけど、それでも落胆は禁じ得ない。
生死不明から実は生きてた、くらいならいいんだけど、明らかに死んだ描写があるのに生きてるのは……ねえ。

ちょっと期待値を上げすぎちゃったかな。まだ評価に迷う。

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西尾維新の他の作品は読んだことがないので、彼自身について言及しないが、この作品に関していえば描写不足が非常に気になる。
はじめはただつまらないだけの漫画だったが、最近はようやくなにがしたいのかがわかってきた。
しかし、かといって面白いわけでもない。
この作品はその説明に終始するだけで、圧倒的に描写が足りないからだ。
漫画ではなく筋書きを読まされている気分になる。
「こういう展開を思いついたよ」「こういう設定ってどうかな」という説明ばかりが目につく。
思いつき自体はそれほど悪くないのが残念なのだ。

たとえば、この作品には「異常」「特例」「通常」という概念が登場する。
最初にこの概念が説明された回(22箱)での印象は、多くの漫画でありがちなように「異常>>(越えられない壁)>>特例>通常」といったものだった。
だが、すぐにこの先入見は壊される(24箱)。
はじめは「異常>特例」を前提とした番狂わせかと思ったが、それ以降も「異常」は次々と「通常」や「特例」に敗れていく。
戦闘前にはお約束の「異常すげー」と前振りしながら、戦ってみると大してすごくなく、結果としてガッカリする。
事前に「戦闘向きではない」とご丁寧に説明するものもいる(34箱、47箱)。
読者から強いと誤解されがちな、しかし実際には強くない敵を「戦闘向きではない」などと説明するのは、敗北フラグというより敗北という結果を読者に納得してもらうための布石だ。※
結果が見えているのでハラハラドキドキは期待すべくもない。

これらの展開に読者は驚いたのではなく、ただ当惑した。
説明がなされば普通はその描写が期待される。
だが、「異常すげー!」という期待された描写はなされず、ガッカリな展開が続いた。
「異常」だからといって「特例」より強いとは限らず、それどころか「通常」より強いとも限らない。
そのことを示すために、おそらくは意図的になされた展開なのだろう。
が、結局は説明に説明を重ねているだけに過ぎない。
ゆえにどうにも腑に落ちない。

で、最新話(54話)の話。
都城王土が当初の印象からどんどん格を落とし、挙げ句の果てに「異常性に振り回されていただけ」という展開は予想もしていたし、納得もできたが、これも「異常性に振り回されてました」と説明しているにすぎない。
「異常性に振り回されていた」というなら、彼自身はそのことに気づかない・認めたがらないというのがリアルだろう。
現在がその状態であるのかも知れないが、象徴的な回想エピソードによってそれは「説明」されてしまっている。
それがなんとももったいない。
傲岸不遜に振る舞う彼を、「もしかしてこいつ能力に振り回されているだけなんじゃね?」と思いながら読んでいるうちのが面白かった。
いつかはそのことを明かさなければならないが、せめてもっと間接的な方法もあったはずだ。
異常性を制御できていた13人として宗像形がいた。
他の13人は制御できないことなどが示された。
本人の意志とは無関係に異常が発動するケースなどもあった。
めだかの洗脳によって「異常」に人格を奪われるエピソードも描かれた。
伏線は十分に張られている。これらをもっと巧く利用できなかったのか?
自由意志や人格形成がテーマの一つになっているようだが、「異常性に振り回されている」かどうかなど本来は客観的に示せるものではないはずだ。
洗脳にしても、そう簡単に解けるものでもないし、解けるにしても文字通り目の色が変わるといったわかりやすいポイントはない。
それを記号的・明示的に描いてしまうのは、やはりもったいない。
科学的な部分での突っ込みはもう野暮だとわかったから、テーマとして設定した内容くらいはリアルさを追求してもらいたいところ。
うまく描写できれば面白くなりそうな素材を説明によって台無しにしてしまうのはこの作品に限ったことではない。
本来は目に見えない概念を大胆に視覚的に表現する面白さを持った漫画もあるが、この漫画にはそれすらもない。


おそらく、こういった評価を受けることも作者は自覚している。
そして、評価を悩ませるために予防線を張りまくっている。
そのせいでいちいち何度も読み返させられた。
マジレスしたら負け、なにをいっても「わざとです^^」と返されそうな感がある。
「面白さ」よりも、彼はそういった形でのエンターテイメントを提供しているのだろう。
漫画という媒体で漫画的でない作品を描くことで読者を挑発しているかのようだ。
こんなふうに長々と感想を書いてしまったり、なんだかんだ気になる作品ではあるからね。
ハッキリ言って、『めだかボックス』は面白くない。だが、エンターテイメントとしては成立している。
西尾維新ってたぶんそういう作家なんだと思う。他の作品は知らないし、興味もないけど。



※『ひぐらしの鳴く頃に』
少なくとも2回は「戦闘向きでない」と説明し、強引に勝敗結果を納得させようとしていた失敗例。

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われわれは人には道徳的であることを求めたがるが、自分ではなかなか道徳的な行動はとらない(中略)善良であれと他人に説教することは人間の強い本能であるが、それに従うことは本能ではない。
「道徳的である」ということは、すなわち「利他的である」ということだ。
そして、他者に道徳的であることを強制するのは「私に奉仕せよ」という意味であり、いうまでもなく利己的な行為である。
「他者に道徳的であることを求めること」と「自身が道徳的であること」は真っ向から矛盾する。
「道徳的である」ということは、要するに損なのだ。

さて、僕自身のことをいえば「道徳は矛盾だらけだ、嘘っぱちだ」などと信じているくちで、積極的に道徳的に生きようなどとは思わないし、同時に他者に道徳的であれと求めることもない(少なくともそう心掛けている)。
しかし一方で、「自分にできないことを他人に求めるな」という道徳も存在するはずだ。
となると、道徳という概念を嫌い、一定の距離をおきたいと願っている僕も、やはりそういった他者の強制に従って生きていることになる。
いくら僕が自らの自由意志で決定した生き方だ、などと主張しても、その根底にはやはり他者からの強制・視線が前提にある。

ならば、最も非道徳的な生き方とは「他者に道徳的であることを求めつつ、自分では一切道徳的であろうとしない」という無責任な説教家、すなわち人間の本能そのままの生き方ではないか。
一番賢いのは、一番得をするのは彼らではないか?
だが、他者に求めつつ自分で実践しないものは、やはりそのことで非難されるだろう。
囚人のジレンマにおいて「しっぺ返し(お返し)」戦略の強さはそこにある。
自らが道徳的であるかのように振る舞うのは、信用を得るための手段でもあるのだ。
ただし、それは彼の同一性が保たれている場合に限られるし、「他者に道徳性を求めることで得られる利益>非難される不利益」であるならば、彼はそれ以降も無責任な説教家を続けるだろう。
実際に道徳的である必要はない、そう見えるよう無知なお人好しを騙せればいいのだ。

現実は囚人のジレンマほど単純ではない。
関係は一対一とはかぎらないし、進化的拘束とその利用、なんでもありだ。

この複雑なゲーム場で、われわれはいかに生きていけばいいのだろう?




「他人をおもいやる遺伝子」ってなんだYO!
この邦題はひどい。
ちなみに原題は"The Origins of Virtue: Human Instincts and the Evolution of Cooperation"

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プロフィール
HN:
饗庭淵
性別:
男性
自己紹介:
読みは「あえばふち」だよ!
SFが好きです。
公開中のゲーム作品
ロリ巨乳の里にて
パイズリセックスRPG。

幽獄の14日間
リソース管理型脱出RPG。

カリスは影差す迷宮で
仲間を弱らせて殺す遺跡探索RPG。

黒先輩と黒屋敷の闇に迷わない
探索ホラー風セクハラゲーム。

英雄候補者たち
特に変哲のない短編RPG。

Merry X'mas you, for your closed world, and you...
メタメタフィクションノベルゲーム。

公開中の小説作品
創死者の潰えた夢
世界を支配するはずだった黒幕の野望は、隕石によって粉砕された。

或る魔王軍の遍歴
「主人公補正」によって哀れにも敗れていくすべての悪役に捧ぐ。

ドアによる未来
「どこでもドア」はいかに世界に影響を及ぼし、人類になにをもたらすのか。

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