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裏設定について
writer:饗庭淵 2011-06-24(Fri) 小説 
裏設定というものがございます。
すなわち、「作中では明らかにされない設定」のことです。
はてさて、こんなものに意味はあるのか。
設定があるんなら作中で全部明かせや! 作者の自己満足や!
と、私は今まで思っていました。

では、裏設定に意味があるとしたらどういったものでしょう?
一つに、読者に想像の余地を与えるというものがございます。
我々は現実に生きていて、様々なものを見、聞き、様々な疑問を抱きます。
ですが、そのすべてを知ることはできません。
名前も顔も知らないような人々が地球上には何十億もいるのです。
あるいは身近に知っているあの人もこの人も、ときに不可解な言動を見せることがありましょう。
その意味は? どのような事情があって?
知ることもできますが、一生知ることはできないかもしれません。

このような、不親切設計のリアリティをフィクションの中で再現したい。
そういったときに、裏設定というのは活きてきます。
確かな事情はあるのだけれど、読者や登場人物に明かされることはない。
『ハンターハンター』などが、こういった設計思想に基づいてつくれています。
ネタに困らないための予防線ともいえますが、この作品ではおそらく回収するつもりのない伏線がいくらかございます。
このバランス感覚のおかげで「世界の片隅で冒険している」感をうまく演出できています。
ですが、同作品に緻密な裏設定があるとは思えません。
作者のみ知るばかりではありますが、おそらくは曖昧にぼかしているだけで、作者自身も詳細な設定については考えていないと見るのが妥当でしょう。
それは世界地図の適当さからも推し量れます。

そうです、「不親切設計のリアリティ」を再現するだけなら、なにも裏設定は要らないのです。
ただ、曖昧にぼかしてしまえばいい。作者も、わざわざ設定を確定させる必要はないのです。
ちゃんとした設定があるのなら、やはり読者に開示すべきでしょう。
それが『ワンピース』のような冒険譚であれば!
(『ワンピース』は伏線をきっちり回収しすぎなところもあるけれど)

さてさて、いきなりこのようなお話をはじめたのも、他でもありません。
私の作品『或る魔王軍の遍歴』が、おそろしいまでの裏設定祭りなのでございます。
これまで私は、裏設定というものに否定的な立場をとってきました。
私は設定をあまり念入りに錬るタイプではございませんでした。
必要最低限の設定は考えますが、必要最低限の設定しか考えません。
裏設定などもってのほか、労力の無駄です。
その私が、あろうことか裏設定に溢れかえった小説を書いてしまったのです。
「ならば、その設定を作中で明かして裏でなくせばいい!」
そうはいきません。明かすタイミングがないのです。
「じゃあなんで明かすつもりのない設定なんてつくったんだ!」
理由は、この小説の世界設定は、もともとこの小説のために錬られたものではないからです。
ある馬鹿みたいに長い大長編の作品構想がありまして。
しかしこの作品、長すぎてまず書く気はしません。
プロットですら未完成、着地点が見えないような構想です。
ホントに書くのか書かないのかわからないまま、設定やらプロットやらを延々と煮詰めて参りました。
この作品においては、さまざまな世界設定はタイミングを待って明かされます。
しかし、それは大長編だからこそ可能な所業。
「どうせ同じような世界設定(ファンタジー)の話を書くんなら、一から考えんの面倒だからこの構想をもとにパクってしまえ」
『或る魔王軍の遍歴』は、このようにして借り物の世界を舞台にすることにしました。
そして、自ずと元作品と同じようなシチュエーションが発生します。
元作品では、あるエピソードで残った謎が、別のエピソードで解消されます。
しかし『或る魔王軍の遍歴』においては、解決編が存在しないのです。

なんということでしょう。
これでは読者にただならぬもやもやが残ってしまうのでは?
いえいえ、明かすつもりのない裏設定です。そんなに酷い煽り方はしません。
それに、読者も納得してくださることでしょう。裏設定が明かされない理由についても。
『或る魔王軍の遍歴』は、世界を冒険したり、世界の謎を解き明かすような、冒険譚ではないからです。
ある一本の明確なテーマがあり、それを描くためにある架空の世界を舞台にしているに過ぎません。
ゆえに、裏設定は明かされず、明かす必要もないのです。
はてさて、この作品のテーマとは?
ずばり「主人公補正のグロテスクさを描く」というものでございます。
私常々、以下のような発言をしてきました。
「主人公が勝つなんて分かり切ってるので悪役を応援してしまう」
「悪役が多額の予算と念入りな準備を経て発動した壮大な世界征服計画を主人公が叩き潰すのを見るとすごく哀しい気持ちになる」
「どんなに緻密な計画を立ててもメタ的に敗北が決定している悪役っているよね。あの哀れさは胸を打つ」
「悪役は悪役でなんらかの思想を持っていて、長々と演説したりするんだけど、主人公はそれを否定するだけで語るべき思想を持ってない。こりゃ悪役の方を応援したくなるわー」
おわかりいただけますでしょうか?
おわかりいただけないかもしれません。
というわけで、おわかりいただくために一つこの感情を作品化してみようという試みです。

主人公は「勇者と魔王」。とてもわかりやすいですね。
勇者と魔王を怠け者にしたり萌えキャラにしたりなどというのはもはややり尽くされむしろ目新しさがないので、キャラ設定そのものはあえて王道です。
魔王は強くてかっこよく、勇者は熱くてウザい仕上がりになっております。

魔王の目的は世界征服です。定番ですね。
ですが、その背景には複雑な政治事情や、理念・思想がございます。
勇者のみならず、数々の冒険屋が魔王を狙っています。
部下の扱いをはじめとする組織運営についても、魔王は多くの苦労と努力をしています。

一方、勇者といえば、非常に単純な世界観の中を生きています。
彼自身はなんら理念も思想もなく、ただ頑張っている人(悪役)の邪魔をするだけの存在です。
世界を善と悪で色分けし、そのことについて一切疑問を抱くことがありません。
それでいて、彼は常に奇跡を味方につけ、申し訳程度に苦労しつつ、結果的にはなんでもうまくいきます。
それ以外の人々はとてもシビアな世界の中を生きているのに、とても理不尽ですね。

ですが、RPGの設定というものは得てしてそういうものです。
世界を征服しようと、それだけの力のある魔王を、たかがティーンの少年たちがその野望を阻止してしまうのです。
そんなふざけた存在を敵に回してしまったとなれば、魔王も堪ったものではないでしょう。
この作品のテーマはそれです。
そのために、勇者以外の世界は非常に緻密に、複雑に設計されています。
こういった類の作品であれば、裏設定というものは活きてくるのではないでしょうか。

・仲間が傷つけられると力が増す
・愛と勇気で何度でも立ち上がる
・ピンチになると覚醒する
・明らかな致命傷は必ず運よく避ける
・短期間の修行で劇的に強くなる
・ヒロインは勇者に惚れ、人々は勇者をたたえる

このような理不尽な主人公補正を持った相手に対し、魔王はどう対処すればいいのでしょうか?
とても哀しい物語の始まりです。

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この記事へのコメント
無題
ひどい(褒めてる)
ベギンレイム 2016/10/09(Sun):20:31 編集
無題
これをどうぞ
NONAME URL 2016/11/12(Sat):45:32 編集
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プロフィール
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「主人公補正」によって哀れにも敗れていくすべての悪役に捧ぐ。

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「どこでもドア」はいかに世界に影響を及ぼし、人類になにをもたらすのか。

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