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writer:饗庭淵 2024-05-05(Sun)  
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短編小説:『非実在青少年』
writer:饗庭淵 2010-03-10(Wed) 小説 

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「やめて! 中に出さないで!」
「どうせ8歳幼女なんだから妊娠なんてしねーよ! ひゃっはー!」
 そんなふざけた会話を興じる二人はともに22歳で大学生の独身男性だったが、そのうちの一人は誰がどう見ても黒髪ロングの可愛らしい幼女ではなかった。身長比でいれば、ちょうど股間のあたりに顔が来る、などということもない。
 街中を歩きながらの会話、露骨な下ネタに二人は笑い転げる。周りにひと気がないからないからよかったものの、端から見たら気が狂っていると思われかねない。両者とも爽やか青年と呼ぶにはほど遠い容姿をしていたからだ。
 二人が向かう先はパスタ専門のレストランだ。昼食どき、学食のメニューに飽きたからと大学を出て外で食べることにしたのだ。少々値は張るが味は保証されている。もっとも、一般的な大学生にとって味など問題ではなく、重要なのは値段と量以外にはないのであるが。
「お前、どう見ても18歳以上には見えないよな」
「そりゃそうだよ。だって幼女だし」
 二人はそれぞれ席に着き、とりあえずは水を口に含む。そして、メニューを選んで注文を済ませたあたりで気づく。男二人で外食。悲壮感を紛らわすために馬鹿話に花が咲く。
「そういえば、この前いってたあれ、どうなったの?」
「ああ。だいたい形になってきたよ。ちょうど読んでもらおうと思っていたところだ」
と、男が鞄からA4紙何枚かをホッチキスで束ねたものを取り出した。
「へー、なるほど。こういう切り口で来たんだ」
「で、どうよ。面白い?」
「試みとしては面白いような気もするけど……そもそも小説は別に問題ないんじゃなかったっけ?」
「漫画やアニメはダメだけど小説は高尚ってこと? まあ、確かに地の文と会話文で記述が矛盾してるなんて、どう考えても小説でしかできない表現だしなあ。むしろ画期的って賞賛されちゃう?」
「前衛芸術やら社会風刺を気取ったメタフィクションがやりたいってのはわかるけど、実験的要素が強すぎて作品としての完成度は低いと言わざるを得ないかも」
「お前、幼女のくせにやたら言うこと鋭くね?」
「いくら言うことが幼女っぽくなくても、設定で18歳以上でも500歳以下でも、外見がどう見ても幼女である以上、いくら否定しても幼女というレッテルからは逃れられないのだから、別に幼女っぽく振る舞わなくてもいいかなーっていう、ある種の諦め」
「達観してますね」
 男二人は食事を済ませたあともしばらくの間、席に居座り会話を続けた。食後のデザートをちまちま口にするもすでに平らげ、残すは水のみになっていた。平 日の日中、もとよりそれほど客はいない。会話の内容は常軌を逸していたが、大声で話しているわけでもなく、別に誰かに迷惑をかけているわけではない平凡な 情景だ。
「あ、そうか」独り言のように。「地の文が法を恐れて嘘をついてるという解釈もできるってことか」
「うぇ? 今ごろ気づいたの? そんなにわかりにくかったかなあ」
「文学の前提を覆しすぎててハッキリした説明がないかぎりわからないかも」
「でも、個人的にあまり説明的なのは好きじゃないんだよな。こう読んでくださいって強制してるみたいで」
「結果的にあたしは気づいたんだから、まあいんじゃない?」
「で、どうだろう。それを踏まえた上で、アウト、セーフ?」
「さあ。別にこのくらいはセーフなんじゃないの?」
「でも劇中劇もダメらしいぜ」
「え? マジで」
「たとえば18歳以上の登場人物が14歳の登場人物を演じてる、って設定でもダメらしい」
「外見で判断するわけだしね」
「欧米人からすりゃアジア人は結構な割合で実在を剥奪されちまうな」
「つまり、視覚化する場合はいかなる状況・設定であれ、それを描いてしまった段階でアウトってことか」
「そうなる。逆に言えば、視覚化しなければなにしてもいいってことになんのかな」
 次第に会話が途切れ、コップの中には水すらなく氷しか残っていない。からからと舌の上で転がし、噛み砕き、ふと我に返る。
「おい、いま何時だ」
「んーっと、1時くらい?」
「もうそんな時間か。寝ようかな」
「疲れたのはわかるけど、もう一回くらいはいけるんじゃない?」
「元気はつらつ幼女だなあ」
「それにしても、お兄ちゃんの部屋ってホント汚いよね」
「うるせー」
 昼休みは1時に終わり、次の講義がはじまる。本来なら急がねばならないのだが、二人とも妙にのんびりしていた。出席を急がなくても支障の出ない類の講義なのだ。寝るという選択肢が真っ先に浮かぶほどの。
とはいえ、あえて遅れる理由もない。二人は会計を済ませて大学へ向かう。さすがの二人も少しばかり早足で、しかし門の前ですれ違った一人の男にまた足を止められる。思わず数分間の立ち話、用があるからと断るのが少し遅れた。
「……だれ?」
「大学の友人だよ。ったく、こんなときに話しかけてくんなよな」

***

「絵がつけばアウトってことになるんだったら、たとえば挿絵のついた小説はどうだ? 絵そのものに猥褻性は欠片もなくとも、この絵の幼女とズッコンバッコンしてました、って書くのはアウトか?」
「幼女は今とてもぐったりしてるので話しかけないでください」
「というわけで、お前を模写してみた」
「あまりにそっくりでおまんまんぐちょぐちょだよう……」
ou.jpg









 このように、童貞である彼の妄想力は凄まじく、いつでもどこでも架空の幼女を描き出すことができるのだ。大学ノートは彼のお得意のキャンバスである。
「さてと、そろそろ朝食でもとるか」
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