忍者ブログ
あえばさんのブログです。(※ブログタイトルはよろぱさんからいただきました)
[PR]
writer:饗庭淵 2024-05-07(Tue)  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


人類補完機構
writer:饗庭淵 2012-06-16(Sat) レビュー・感想・紹介 
コードウェイナー・スミス〈人類補完機構〉シリーズの『第81Q戦争』と『シェイヨルという名の惑星』を読んだのでまとめてその感想。

読んでて、まず思ったのは、自分の中で「SF=ハードSF」の観念ができあがっているなあ、ということ。
というのも、スミスはハードSFではなかったからだ。
ハードSFというのは「既知の科学理論を参照し、架空の現象についても原理や理論を厳密に描写するSF」ジャンルとのこと。
で、僕はSFというのはそういうものだと思っていたが、あくまでそれはSFのなかでの一ジャンルに過ぎなかったらしい。
(もちろんハードSF以外のSFも読んだことはあるし、その認識もあったが、すっかり忘れていた)

そして、スミスを読んでいて「これはSFなのか?」という疑問が何度か頭をもたげた。
おっと、いやだからといって「これはSFじゃない!」などと主張しジャンル論争を呼び起こしたいわけではなく、僕がそう思ったという感想がスミスの作風を伝えるのに役立てばと、あくまでそういう意図です。
不毛なジャンル論争には興味ありません!
実際、スミスもファンタジー誌に作品を応募などしていたようで、「ファンタジー寄りのSF」ということでイメージは伝えられるのではないでしょうか?

つまりスミスの作風は、ハードSFのように原理や理論の説明を積み上げてリアリティを構築するタイプではなく、あえて説明を省くことで読者の想像力を刺激し力業で読者を異世界に引きずり込むタイプ。
シナリオやストーリーや設定考証ではなくテキストを読ませる。
スミスは奇妙な言語表現や造語で読者の興味を惹くのが持ち味のようで、いわば詩的な作風。
訳のクオリティに左右されるのは翻訳作品全般でいえるが、スミスは特に顕著なのではなかろうか。
機械翻訳で内容がわかるだけでは楽しみは二割程度か(普通の作品が五割程度として)。
もちろん、原文を読んだり他の翻訳を読み比べたりしたわけではないので憶測に過ぎないけれど。


さて、内容について。
あらすじとしては「人類補完機構」という組織を軸にした一万年規模の未来史短編集といったもの。
概要だけ聞くとすごいスケール感にワクワクしたが、読んでて壮大なイメージは特に喚起されない。
「補完機構」には数人の長官がいて、といった組織図の説明はたびたびなされるが、長官以外には誰がいるのか? 下部組織は? そういう描写はほぼない。
一万年近く人類を統治してきた、という設定だったか、しかしそれに見合うスケール感はない。
そういう作風だ、ということなら別にそれでいいのだけれど。
面白いか、といわれれば、まあ面白いけれど、「よくできたラノベ」レベル。
「「なんか変な言動の登場人物が現れて、「なんだこいつは?!」というパターンの話が多い。
あらすじだけでは面白さは伝えられないが、描写については惹き込まれるものはある。
入念に伏線を仕掛けたり、オチでどんでん返したり、そういうテクニカルなことはあんまりしてない。
例外としては『第81Q戦争』収録「ガスタブルの惑星より」
この作品はユーモアに溢れてて好き。

あと好きなものを挙げれば同収録「大佐は無の極から帰った」
二次元から帰った大佐が二次元に戻りたい戻りたいって話。
「人びとが降った日」も、一発ネタだがイメージは強烈。

『シェイヨルという名の惑星』では、表題作が特に気に入った。美しいグロテスク。
「刑罰星」というアイデアはSFではよく見かけるが、彼がネタ元だったりする?


拍手

PR

この記事へのコメント
この記事にコメントする
nametitle
mailtext
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
URL
pass

プロフィール
HN:
饗庭淵
性別:
男性
自己紹介:
読みは「あえばふち」だよ!
SFが好きです。
公開中のゲーム作品
ロリ巨乳の里にて
パイズリセックスRPG。

幽獄の14日間
リソース管理型脱出RPG。

カリスは影差す迷宮で
仲間を弱らせて殺す遺跡探索RPG。

黒先輩と黒屋敷の闇に迷わない
探索ホラー風セクハラゲーム。

英雄候補者たち
特に変哲のない短編RPG。

Merry X'mas you, for your closed world, and you...
メタメタフィクションノベルゲーム。

公開中の小説作品
創死者の潰えた夢
世界を支配するはずだった黒幕の野望は、隕石によって粉砕された。

或る魔王軍の遍歴
「主人公補正」によって哀れにも敗れていくすべての悪役に捧ぐ。

ドアによる未来
「どこでもドア」はいかに世界に影響を及ぼし、人類になにをもたらすのか。

Melonbooks DL

新着記事
カテゴリー
アーカイブ
検索
新着コメント
[02 / 26 by 白蛇]
[02 / 26 by 白蛇]
[05 / 21 by 西 亮二]
[12 / 15 by NONAME]
[07 / 04 by アーミー]
ブックマーク
連絡先
aebafuti★yahoo.co.jp
(★を@に変えて送ってください)
カウンター
Powered by [PR]
/ Design by sky hine / PR:忍者ブログ