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あえばさんのブログです。(※ブログタイトルはよろぱさんからいただきました)
『セックスはなぜ楽しいか』
writer:饗庭淵 2010-02-26(Fri) レビュー・感想・紹介 
このタイトルは明らかに釣りだね(´・ω・`)
たしかに本書の内容に的確であるのは違いないが。
輸入時にタイトルのせいでポルノ扱いされたこともあるとか。

さて内容は、進化生物学のアプローチから「性」についての考察。
以下、感想というより面白かった内容のまとめ。

・人間の性生活はかなり異常
①結婚する
②男性も女性も子供の世話をする
③社会の一員としてテリトリーを共有
④仲間に隠れて性交する
⑤排卵が隠されている

いずれも人間にとっては当たり前だが、哺乳類のなかではかなり異常らしい。
これらの特異な性質はヒトの子供の弱さが主に絡んでるようだ。
乳離れしてからも10年以上は誰かに餌を運んでもらわないといけないからね。


・子を捨てた方が勝つ
『利己的な遺伝子』でも論じられていたことだが、子育てというものは押しつけた方が勝つ。
「勝つ」というのはあくまで経済学的・進化的な意味でだ。
このオスとメスの争い、「どちらが子供を捨てるか」はさまざまな要因が絡む。

投資額。子供を産むのにどれだけ投資したか。
卵子の方が精子よりはるかに大きい。
よってメスの方が一個あたりの配偶子への投資額は大きい。
だが、一回の受精のためにオスは数億の精子を放精するので受精の際の投資額はあまり変わらない。
投資額の差は体外受精か体内受精によって大きく変わる。
体外受精であればオスもメスも同様に逃げ出すチャンスがあるが、体内受精の場合、メスの負担が大きい。

子育てによって失うチャンス。
子育てに費やす時間に別の方法で子供を増やせるならその方がいい。
メスは一生のうちに子を産める数が決まってるので、子を捨ててもメリットがない。
オスのが浮気がちなのはこのせい。

親であるかの確信度。
メスは産まれてくる子が自分の子であると疑いの余地はないが、オスの場合はそれを確信できない。
もし自分の子でない場合は子育ては完全な徒労に終わる。


・マダラヒタキ
人の性生活は哺乳類の中では異質だが、鳥類には似たものが多い。
例としてマダラヒタキの性生活があげられている。
オスがメスに求愛、交尾。
受精成功を確認、抱卵に忙しいメスは別のオスにはなびかない。
雄はすかさず別のメスに求愛し、交尾。
で、第一のメスの元に戻り、雛に餌を与える。
第二のメスにも餌は運ぶがその頻度は低い。
こんな感じ。つまり浮気がデフォ。

このとき、メスとしては第二夫人にはなりたくない。
よってオスはメスを騙さなければならない。
そういうわけで第一と第二の間にある程度距離をおくが、離れすぎると往復が大変になる。
そんな駆け引き。


・男はなぜ授乳しないのか
奇妙な問いかけだが、考えてもみれば納得できる。
オスがこの世話をしないのならともかく、ヒトは男も普通に子の世話をする。
ならば、オスも授乳できていてよいのではないか?
実際、鳥は「ハト乳」として知られるよう、オスもメスも授乳できる。
タツノオトシゴはオスが妊娠する。
ヒトのオスでも生理学的には授乳は可能だ。
ホルモン投与など医学的な方法でもそうだし、飢餓状態からの回復時に胸が発達するということもあるようだ。

またはこういう事例。
外見上は普通の女性よりも女性らしいが、子宮も卵管も上部膣もなく、膣は5cmで途切れている。
初潮が起きないため医者に行き、そのときはじめて気づく。
なんと《彼》はY染色体を持った男性であり、精巣を持つが、ペニスはない。
しかし外見上はどう見ても女だし、本人も自分を女だと思っている。
こういう例はファッションモデルに多いらしい。
性差というのは思う以上に曖昧なのだ。
また、授乳の契機として妊娠が知られるが、別に妊娠しなくても授乳はできる。
「乳頭に繰り返し機械的な刺激を与えるだけで、乳汁分泌が起こる」(!)

さて、「男はなぜ授乳しないのか」という問いに戻る。
簡単にいうと「進化的拘束」が大きいらしい。
つまり、鳥類においてはオスもメスも普通にこの世話をするが、哺乳類では稀だ。
ならば授乳できる必要はない。
子を世話するにしても縄張りパトロールという任務もある。
ヒトにおいては男も授乳できる方が効率的かもしれないが、そのように進化するには時間がかかる。
ホルモン投与など医学的な処置で男も普通に授乳する時代が来るやも。
ただし、生理学的な障害よりも心理的な障害の方が大きいだろう。


・なぜ排卵が隠されているのか?
性交は繁殖のための手段だ。この点に疑いはない。
また、性欲やセックスの快楽は性交を促すための本能だ。これも間違いない。
ではなぜ、ヒトは確実に妊娠する時期を選んでセックスしないのか。
性交や配偶子の生産にはかなりのコストがかかる。
普通、哺乳類は排卵の時期を選んで交尾し、それ以外のときは交尾に興味を示さない。
その方がどう考えても効率的だ。
だがヒトの場合は排卵が隠されており、いつでも性交を楽しむ。
これが本書のタイトルの由来だ。

以前までは「接着剤としてのセックス説」があった。
ヒトの場合、メス単独で子を育てるのは難しい。オスの協力が必要だ。
よって、いつでもセックスできる状態でいることでオスを引き留める。
だが、ヒトより頻繁にセックスをするボノボは乱婚であり、ゴリラはノーセックスでハーレムを維持している。
よってこの説は現在は否定されている。

この問題にはさまざまな説が提示されたが、生き残っている説としては二つある。
「マイホームパパ説」一夫一妻を促し、確信度を高めさせる。
「たくさんの父親説」多くの父親に自分の子かもしれないと思わせ子殺しを避ける。

前者については、他の哺乳類のように赤い尻などで排卵時期がわかったら、と考えるとわかりやすい。
もし赤い尻によって排卵の時期がわかれば、その日にはするが、それ以外の日はしない。
よって、男は外へ出て他の赤い尻の女を探す。
ガン、カモメ、マダラヒタキでは実際に行われていることだ。
夫が帰らないと妻はこの世話ができない。赤ん坊終了のお知らせ。

後者は、他人の子供を殺して代わりに自分の子を妊娠させるという「子殺し」を避けるため排卵時期が隠されているという説だ。
いつ妊娠するかわからないので、父親は本当に自分の子か確信できないが、しかし自分の子の可能性もある。
そうなると子殺しは危険な賭になる。
よって女は「確信度100%の自分の子」を守ることができる。
「マイホームパパ説」とは対極にある。

最終的に本書で提示される仮説は「たくさんの父親→マイホームパパ」。
当初、子殺し防止機構として排卵隠蔽は行われていたが、現在はマイホームパパとして機能しているというもの。
進化の過程である適応が別の機能を得るというのはよくある。
魚のひれが陸上生物の四肢となったように。


……しかしこの排卵隠蔽説には批判がある。

「排卵隠蔽説」批判

メスが排卵を隠して繁殖外交尾をし夫(=個体)をだましても、配偶者のオスの子はできずその遺伝子の複製はできないのだから、遺伝子が「だまされる」わけがない(*5)。(「だまされる」遺伝子は、複製ができず絶滅する)。

上の短い文章で本書の排卵隠蔽の章の論述はほぼ全否定される。
ダイアモンドを擁護をしようと少し頭を捻ってみたが正直、反論の余地がない。
たしかに、ダイアモンドの「人間は異常である」という語り口には少し疑問符が浮かんでいた。

「性交渉は、繁殖という生理機構だけで理解できず、オスメス間の社会的なやりとりの形だ」
このあたりは『セックス・イン・ザ・フューチュー』が非常に興味深い。


とまあ、完全に論破できてしまう内容があったりだけど、読んでるあいだは騙されていたので仮説としては楽しめる。
評価としては非常に面白い本なのでオススメ。

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