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あえばさんのブログです。(※ブログタイトルはよろぱさんからいただきました)
『オーシャンまなぶ』
writer:饗庭淵 2011-08-27(Sat) レビュー・感想・紹介 
オーシャンまなぶ

前々から名前は知っていたんですが、昨日か一昨日に一気に読みました。
なるほどこれは面白い。しかし、タイトルで損をしているような気はするw
僕の印象としては、コロコロコミックあたりで連載しているような、児童向けの熱血バトルマンガ? といった感じでした。そうではないんだろうなあとは思いつつ。
実際には、科学的な設定に凝っている知能バトルマンガ、といったところでしょうか。

憶測ですが、この作品のコンセプトはもともと2chやTwitter上で実際に繰り広げられるウィルコンバットから発想したんじゃないかと思ってます。
あるいは、もっと単純にディベートでも。
とにかく、根幹となったワンアイデアは言葉の殴り合い、言葉による心のダメージが実際のダメージになるという設定にあると思います。
この作品は、そのシンプルな設定から話を膨らませていくのが非常に巧い。
この特殊なルールの中では、もちろんさまざまな特殊な戦術が考えられます。
まずはそういった能力知能バトルの醍醐味。
それだけに留まらず、当然生じる様々な疑問を巧く処理する形で設定を広げ、物語に組み込んできます。
なぜ言葉の暴力が実際のダメージになるのか? なぜ物理攻撃が無効になるのか?
無効になったエネルギーはどこへ行くのか? ダメージを再現するエネルギーはどこから来るのか?
これらを「そういうもの」という思考停止で済ませずに、作中の科学者はこれらの問題に疑問を抱き、必ずしも究極的な結論にたどり着けるとは限らないまでも、説得的な仮説や回答が用意されています。
ファンタジーでは必ずといっていいほど問題になる質量保存則やエネルギー保存則も、無視せずに果敢に挑みます。

風呂敷を広げないためのルール設定ではなく、逆にどんどん風呂敷が広がっていくのが非常に快い。
たとえば、凍結の輪(フリーズ・リング)という技。
物理攻撃を無効化し、言葉のダメージを実際のダメージとして再現するのは、「ネバー」という設定で説明されます。
言葉を話す生物はこの薄い皮膜に覆われており、この皮膜がその機能を再現します。
本人が受け入れた場合には触れ合うことができるが、拒絶した場合にはどんな力でも彼にダメージを与えたり、彼を動かしたりすることはできない。
ただし、この設定ではある問題が生じてきます。
この皮膜そのものが武器になるというものです。
すなわち、この皮膜を纏った生物が敵の首などを絞め、手で輪っかをつくるとどうなるか。
ネバーが防御しているため絞殺はできませんが、それは首を絞めている犯人も同じこと。
つまり、互いのネバーが干渉し合って動けなくなるわけです。
「言葉の殴り合い」というコンセプトからは外れながらも、そこを出発点として発想された設定の裏を掻くような技になります。
あるいは、耳を塞いでしまえば無敵では? という疑問。
これにも納得できる解答が用意されています。
このように、かなり設定に凝った作品ではありますが、それらがすべて必然的に、論理的に繋がっている。
「こういう設定ならこういうこともできるよね?」というアイデアをこれでもかと詰めてきて、後付け設定のようなものがほとんど感じられません(実際には、あとから思いついたアイデアはたくさんあるとは思いますが)。

他にこの作品の魅力としては、『バクマン』で言うところの「邪道な王道バトル」「シリアスな笑い」というものです。
「言葉の殴り合い」という設定のため、罵りあいで受けた心のダメージが客観的に目で見てわかるダメージになる。
普通ならただの挑発にすぎない言動が、この作品ではメインウェポンになる。
挑発の巧いやつ、挑発に流されないやつ、いわゆる大物の風格を持っている人物がそのまま強者になるわけです。
それを大真面目に描いているせいで、妙に滑稽で面白い。

それからキャラ!
むろん、僕の好きなキャラはグラーヴェさんです。
「『神以外では説明できないほど不可解だから』そんな論法は我々の世界では、寝言よりも価値を持たない」
この台詞に惚れました。ドーキンスさん? ドーキンスさんなの? ってくらい惚れました。
モデルはアインシュタインあたりでしょうか。彼もそんな感じの思想を持っていた気がします。
こんな素敵な科学者キャラが不可解極まる世界の謎に挑むわけですよ。素敵じゃないですか。
なかでも「世界に言語が一種類しかないのはおかしい」という指摘が面白かったです。
よくあるファンタジー世界のメタパロでもあり、言葉が武器になるという世界観ならではの設定であり、同時に国境を越えても言葉が通じるという不自然な状況の説明にもなる。

さらにいうと(まだあるんかい)、伏線の張り方が見事。
自然な形で、伏線とは思わせないタイプの伏線を至る所に鏤めます。
特に辞書の伏線は驚きました。(これを思いついた作者の高揚感は、すごかっただろうな……!)


という感じで、大変面白いマンガであります。
まあ、もちろん細かい突っ込みどころやちょっとした不満点はないではないですが。
「スネひょんは大きな野望があるのに幼女いじめてなにしてたん?」とか、「クラーヴェ保存則は本当にそれエネルギー収支釣り合うの?」とか。些細なことではありますが。
主人公が世界の構造そのものを変えようとするセカイ系なとこも気になりますが、このへんはどう転んでいくのか。
スネひょんのエピソードから、世界を変えるなんてただごとじゃない、という自覚はあるようですし。
あとは主人公のキャラデザ。どうしてそうなったw
読んでいるとなんか洗脳されて違和感なくなるんですけど、初見だとここで躓くような気がするw
まあなんですか、さくっと読めると思うので読んでみたらいいんじゃないですかね!

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