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『メリクリ』の構造的欠陥
writer:饗庭淵 2010-02-17(Wed) メリクリ 
『Merry X'mas you, for your closed world, and you...』の自己レビューです。
あるいは解説・補足ともいいます。
手前味噌を躊躇わない。

以下、ネタバレを多分に含みますのでご注意ください。

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『メリクリ』の構造的欠陥――
それは「社会性の排除」「複雑性の欠如」を批判しながら『メリクリ』という作品自体、社会性が排除され複雑性が欠如しているということです。
つまり「ならどうすればいいのか」という解決策を『メリクリ』では例示することができないのです。
萌えやエロゲにありがちな類型をパロディ化する、しかしこの作品自体も表現の制約からは抜け出せない。
主人公の思考が違うというだけで、状況はほとんど同じなのですから、ある意味でこれはどうしようもない問題といえます。
本来なら、事件があれば警察に動いてもらいたかったし、主人公の家族も生存してもらいたかったし、覚醒なしに悪魔と戦ってほしたかった。
ヒロインのキャラ立てにもいくらでも工夫があり得たはずだし、超常現象の扱い方も変わっていたはず。
ですが、『メリクリ』では「そうでない」ことに文句をいうだけで、実際に「そうある」ことはできない。
これは別作品で挑戦するしかないでしょう。

しかしそれでもなお、この作品の中でどうにかしなければならない問題があります。
それは「この物語にどう結末をつけるか」ということです。
『メリクリ』は物語を論じるものであると同時に物語であらねばならない。
主人公には独力で未来を切り拓いてほしかったのです。


ぶっちゃけると、最後(24日)の対決は作者自身の葛藤というわけです。
キャラクターがもっと多ければそれぞれに個性が生まれ好き勝手に動き回るのですが、『メリクリ』のように登場人物が少なく複雑性が欠如していると、主人公は作者の分身になりやすいものです。
この作品の場合、主人公に「正体」や「職業」がないのがかなりのネックになってます。
「運命」や「ハッピーエンド」に関する独白も、いかにも「作者の言葉を主人公に言わせてる」感の強い部分でありますが、このあたりの言葉は作者が主人公に無理難題をふっかけている、ともいえます。
「お前は偉そうにそういうけど、お前自身はどうなの?」彼の言葉は彼自身に返ってきます。
しかし、終幕が近づくにつれ彼は作者から独立した「主人公」になる。

「リアリティとは神がいないということだ」と作中で述べられています。
しかし「現実」ならともかく「物語」には必ず「作者という神」が存在するのではないか?
作品(の主人公)と作者の関係――これについては僕もだいぶ悩みました。

主人公は作者の操り人形か?
しかし、一つだけ作者にはコントロールできない領域があります。
エンディングを迎えた先のことです。
主人公は、物語が一端終幕を迎えたあとも物語が続くことを仄めかすことにより作者の支配から逃れた。
作者には描くことのできない無理難題を作者にふっかけることで強引に物語を終わらせた。
と、僕自身は解釈しています。


あとは、付け加えるなら音楽の嘘。
BGMの役割は様々でしょうが、その一つに「作者の思惑通りに観客の心理を誘導する」効果があります。
哀しいシーンに哀しいBGMを流したり、戦闘シーンに激しいBGMを流したり。
ですが、当然ながら《実際には》BGMなど流れているはずがありません。
観客の感情を操作するための嘘なのです。
『メリクリ』の作中でそれを指摘するシーンもありますが、基本的にこの「嘘」を採用し、普通に利用しています。
こればかりはちょっと弁明できないかなあ……(´・ω・`)

24日でBGMを排除したのは少しでも「音楽の嘘」を克服したかったからです。
それでもビジュアルの嘘やテキストの嘘からは逃れられない……
とまあ、物語や表現の嘘についていちいち考えさせてくれるような作品になっているといいですね!
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この記事へのコメント
無題
いまさらながらプレイさせていただきました。
大変よかった。
2016年人々はますます、その役割を演じ、学校や会社などの構造に規定され、キャラクターのように自動的に振舞う。
しかしそのキャラクターの国から逃げようと思っても逃げた先もまたキャラクターの国ではないのか
アメリカではトランプが絶好調だし、フランスではムスリムはまるでゾンビ扱い。
そもそもそう簡単に脱出なんてできやしない。
幸福の道はキャラクターになりきり、このグロテスクな反復世界に埋没するしかない\(^o^)/
いやよかったです。
NONAME 2016/11/08(Tue):49:58 編集
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