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性的嗜好の多様性
writer:饗庭淵 2010-10-15(Fri) 雑記 
ちょっと日頃考えてることを適当にまとめてみる。
まとめるといいつつ二転三転とりとめなく。
基本的に進化生物学の話。
元ネタは基本的にドーキンス。
素人のいうことなので「ふーん」くらいで流して、なにか突っ込みどころがあったら遠慮なくどうぞ。
(あ、ちなみに「性癖」って本来は「性的嗜好」のことじゃないからね! 辞書引いてみて!)

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・前提
セックスの目的は? 性欲の目的は?
普通に考えるなら「子孫を残すこと」だが、実際にはそれだけには留まらない。
娯楽として、コミュニケーションとしてもそれは存在しうる。
だが、「子孫を残せないものは残れない」同語反復、当然だ。
生物としての生存のための性能を差し置いて、虚飾にも思えるような、性淘汰を生き残るための適応が様々な生物に見られる。
どれだけ強くても、優れていても、パートナーを見つけて子孫を残せなければ淘汰される。
もちろん逆についても、いくらモテてもセックスにいたるまでに死んでは、生まれた子を守ることができなければ、元も子もない。


・同性愛。
同性といくら愛し合っても子孫は残せない。
ならば、なぜ彼らは現在もなお存在し続けているのか。
いずれ滅びる運命にある「間違い」なのか? 
NO。同性愛は人間以外の哺乳類でも観測できる。
彼らはいわば乳母のような役割を獲得した適応の結果だと考えられている。
そして、同性愛も絶対的・両性的・機会的同性愛者とある。
絶対的同性愛者は進化の袋小路だ。彼らは子孫を残せない。
しかし、両性愛者は子孫を残す。結果として絶対的同性愛者もたまには生まれる。
すべての同性愛者は両性愛者ないし異性愛者の子供なのだ。
(ただし、テクノロジーがいつかそれを覆すだろう)


・似たような問題――性的倒錯※
「二次元が好きすぎて三次元のセックスが考えられない」とか「おっぱいが好きすぎてパイズリしか認めない」といった子孫の残せそうのない彼らの存在も、絶対的・両性的・機会的の理屈で理解できる。
ただ、これらは先の同性愛とは異なり、どちらかといえば性的アピールをする側の適応だ。
乳房だの脚だの性行為とは無関係の部分に欲情してしまうのは雄ではなく雌の適応である。
それで得をするのは雌だからだ。クジャクの羽根と同じ。
二次元に関しては二次元というミームが人類の脳構造の隙をつき上手く寄生している、というべきだろう。
《方法としては》ウイルスと同じだ。
寄生者にとっては「寄生主の生殖機能が失われようが知ったことかよ!」ってわけだ。
(※「倒錯」という言葉に価値判断は含まれない)


・「延長された表現型」の例として
いつかもツイッターでやったけど、猫のようなペットを「かわいい」と思うのは、実際は猫に「かわいいと思わされている」というのが正しい。
猫をペットとして飼うことで、外形的には人間はなにひとつ得をすることがない。
一方的に猫が人間から餌を搾取する。「かわいい」だとか「癒し」だとかいう得体の知れないものを代価として。
人間が赤ん坊を「かわいい」と思うのはか弱い赤ん坊を守るための適応だが、おそらくそのへんの認識パターンに上手く寄生しているのだろう。
人間が猫を「かわいい」と思うのは猫の「延長された表現型」なのである。
(うん? まて、熱帯魚とかはどう説明する? 宝石とかを綺麗と思うのはなぜだ?)


・同性愛はなぜ憎まれる?
同性愛が進化的適応の一つとして、ではなぜ同性愛者は憎まれるのか?
自然の摂理に反してる?
いやいや、まったく反しちゃいないし、そもそも「自然の摂理」など存在しない。
「同性愛者を憎む」というのもまた、なにかしらの適応の結果であると考えられる。
自らと性質の違う他者を憎む本能。多様性を認めない本能。これらはたしかに人類の脳に染みついている。

もし人類という種の存続を思うなら「多様性を広く受け入れる本能」があった方が絶対に有利だ。
多様な人間がいれば、世界が核の炎に包まれても放射線に耐性のあるものがいるかもしれない。
だが、基本的に人類は多様性を認めない。想像力の及ばない範囲は切り捨てる。
種淘汰説を捨て、遺伝子淘汰説で考えるとすっきりする。
遺伝子単位での鬩ぎ合い。
似たような性質・性格のものはおそらく似たような遺伝子※を有している。だから仲良く。
理解できないやつはまったくの別もんなんだろう。なら邪魔なだけだ。
(※「シストロン」という単位で区分けして考える)


・他の遺伝子を含めた環境
「猫を愛でつつ、同種の他人を憎む」ケースについて考える。
彼の遺伝子にとってこれは錯誤と言わざるを得ない。
猫よりは同種の他人の方が自らと似た遺伝子を有しているはずだから。
そのへんは猫にうまく「してやられている」というべきだろう。
遺伝子は常に最良の選択をしているわけではなく、他の遺伝子を含めた環境に常に最良の選択を阻まれている。


・遺伝子淘汰説、利己的遺伝子説について補足
いわゆる「ジャンクDNA」と呼ばれる領域。表現型には反映されない生物にとってはなんのためにあるのかわからんやつら。
「生物にとっては、だと? おこがましいわ! てめえら生物が俺ら遺伝子のために存在してんだよ!」というのが回答になる。
致死遺伝子とかいわゆる不良遺伝子(だったか)も遺伝子を主体とすることによってのみ説明できる。


・腐女子の存在について
さて、異性の同性愛を好む傾向。これってなんじゃらほい。
雄と雌をなにをもって区別するかといえば、一般的には「配偶子の大きさ」だ。
大きい方が雌、小さい方が雄と定義される。
ゆえに両者は非対称。男の百合好きと女のBL好きは非対称だ。
そしてたぶん、男の百合好きよりは女のBL好きの方が多い。
心理的にはあーだこーだ説明されるけど根本的な説明にはならない。
要は腐女子の適応ではなくBLの適応なのだろうけど。
なぜBLなのか? 「どこ」に寄生しているのか?
女の場合、出産には激痛を伴うしコストも大きい。
だから、男と違って自分がズッコンバッコンする妄想というのには抵抗があるのかしら。
男は可能なら何万人の女ともセックスして子を産ませることができるけど、女は多くても10人くらい(?)だからね。
(一応補足しておくと、これらは統計的な話にすぎない。男女の脳構造の違いはいろいろ議論されるところではあるが、同じ人類である以上そこまで変わらない。ならば男のBL好きもいれば、女で男性向きエロを好むものも当然いる)


・男女の思考回路の違い
男は「俺は今までやってきた相手の一人にすぎない」と考える。
女は「今までやってきた相手で最後に私を選んだ」と考える。
どちらが正しいわけではない。配偶子の大きさの違いがそうさせるのだ
男は基本的に「やり逃げ」でいい。生殖にほとんどコストはかからない。
その際、関心の対象は産まれてくる子供が自分の子か、すなわち数ヶ月以内に女が他の男とやっている可能性だ。
処女を好む性質はこれが極端に強化されているものと考える。
一方、女は出産にかかるコストが大きい。
また、産まれてくる子供は確実に自分の子だからその心配をする必要はない。
関心の対象は男がやり捨てないこと、その拘束力だ。なら経験豊富な相手の方がいい。
「そりが合わない」といった失敗を経験した男なら、同じ失敗を繰り返す確率は低いはずだ。
もちろん、単なる浮気者でないかどうかを見定めて。童貞だとその判断基準がない。


・そうそう、出産における激痛とかマジ意味わかんねえ
脳容量の増大に伴い頭蓋骨がでかくなりすぎたせいだけど。
でも他に方法あったんじゃねえのとは思わないでもない。
産むとして普通は生涯にせいぜい数人だから別にいいんじゃねってことか。
盲腸や目の構造、精管の回り道に代表される「進化的拘束」によって惰性でこんな不合理な生殖手段のままなのか。
激痛をもたらす脳容量のおかげで無痛分娩も進歩しているようだし結果オーライってことですかい?


なんもテーマを定めずに適当に思いつくままかいたらこれだよ!
詳しくはドーキンスさんの著作でも読んでくださいよ。『利己的な遺伝子』と『延長された表現型』でも。
(ドーキンスさんって「ミーム」って言葉を発明した割にはあんまりミームについて語らないよね)
(ドーキンスさんの愉快な仲間たちが「ミーム」で一冊書いてたりするけど)
(ドーキンスさんは生物学者だもんね。ミームの研究はどちらかってと人類学者とか社会学者の仕事だしね)

とまあ、人間の動機の根幹となる感情・倫理観・思考回路も永い適応の歴史で培われたものでありまして(こと生殖に関わると文字通り死活問題だからいろいろ感情が混じって冷静な議論が難しくなるよね)。
野生の人類を観察してるとそのへんが面白くて仕方ない。
しかしだからといって受動的ニヒリズムの如くすべてを諦め肯定するわけではなく、その戦いは現在進行形で続いている!
時代遅れの適応は捨てなければ生き残れない!

つまりなにが言いたいかって……
この世はいつでもどこでも生存のバトルフィールドなんだよ!!
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