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ラノベいろいろ
writer:饗庭淵 2011-04-08(Fri) レビュー・感想・紹介 
好きなラノベは『左巻き式ラストリゾート』、饗庭淵です。
実をいうと、というほどでもないですが、僕はラノベというものをあんまり読んだことがなかったのです。
でもまあ、食わず嫌いはよくないよね! 偏見はよくないよね! みたいな精神で、何作か手当たり次第に読んでみました。
今書いてる作品がラノベっぽいので、お勉強みたいなものですね。
設定が被ってそうな作品を3作品、それ以降はデタラメ。
では、まとめてレビューを載せてみましょう。



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『世界征服物語―ユマの大冒険』
設定被りチェック1作目。
これはない。読むのが苦痛レベル。
徹頭徹尾スイーツ脳な文章で、魔神の代理人として召還された女の子が、世界征服をするのかと思えばそんなことはなかった。


『魔王の憂鬱』
設定被りチェック2作目。
自作のタイトル案を考えてググったらヒット。ふざけるな!
設定被りが特に気になっていたのでamazonでお取り寄せ。結果は杞憂。
要約すると「前半はメタファンタジー、後半はやっすいSF」。
前半が後半の伏線かと思えばそんなことはなかった。
導入やパロディはそこそこ面白かったけど、SF部分はゴミカスだし、全体としてはつまらーん。
魔王がなにをしたかったのかさっぱりわからない。勇者の女子高生飲み込み早すぎ。
とはいえ、大して苦痛もなくサクサク読めて2時間くらいでストレスフリーに読み終えた。
内容としてはまったく完全に予想の範囲内を超えなかった。
「風景描写は大事ですよ」
「そんなの書き手の思い込みよ。読むほうはそんなのどうでもいいのよ。ミステリ小説みたいに風景のトリックが隠されているわけでもないし、まったくの無駄だわ。そんなの読む暇あったら読み手は他のことするわ」
これは笑った。概ね同意ではあるが。
僕も書くときは要らん描写は徹底して省く。
ただ、この小説はあまりに情景描写が足りなすぎる。
テンポはいいんだけど、緩急がない。どこでなにしてんのかわからん。
というわけで、反面教師的に必要最低限の情景描写はちゃんと書こうと思ったのです。


『A君(17)の戦争』
設定被りチェック3作目。
1巻だけ。3冊の中では一番よくできてたかな?
ただ、セルフツッコミ、美少女描写、脈絡のないメタネタ、作者の照れ隠しみたいなのはホントいらねーなあと思った。
特にセルフツッコミ。これはだいたいどのラノベにも言えるのではないか(いや、そうでもないか?)
とまあ、この()内みたいなやつのこと。「どっちだよ!」っていう。
たまーにやるくらいならいいんだけど、それがもう頻出で。
語彙不足を補うために、適当な表現が思いつかなかったから、予防線みたいにセルフツッコミを入れてる感じ。そんなに不安なの?
これが煩わしくてならない。セルフツッコミ入れるくらいなら「(キリッ」って断言できる適当な表現を探して欲しい。類語辞典を駆使するんだ! ツッコミはこっち(読者)でする。
ギャグもやるなら照れながらじゃなくて、もっと堂々と大真面目にやって欲しいんだ。

内容は特に語ることもない王道。
突っ込みどころは多いが、読むのが苦痛になるレベルではないのでよし。
2巻以降を読む気は起こらなかった。


『ゼロの使い魔』
1巻だけ。
割とマシな部類なのではなかろうか。面白くはないけど。
いろいろラノベ読んでるとなにを基準に面白いと判断すればいいのかわからなくなってくる。
ノートパソコンを見せびらかして「これが科学だ(キリッ」とかマジやめてって思ったくらいで、あとは特に。
異世界に放り込まれて戸惑いつつも順応というテンプレートをちゃんと順序立てて説明・描写できてるあたりは評価。
それすらできてない意味不明なラノベと比べたらの話だけど(cf.『これはゾ(ry』『俺の妹(ry』)。
主人公補正でなんか知らんけど勝利とか、「ガンダールヴ」とかいうワケのわからん設定とか、そのへんが破綻しはじめるのは次巻以降なのだろう(よくない噂は耳にしている)。
文章表現に注意して読んでいたんだけど、そこまで悪くないんちゃう?
一人称だけどセルフツッコミとかなかったし。会話もテンポよく続いてたし。情景描写の割合とかもほどよい感じ。
もともと文章の善し悪しとかそこまで気にするタイプじゃないのよ!


『されど罪人は竜と踊る』
モルディーン「すべて私の陰謀だったんだよ!!」
なんだってー。主人公の超推理を前提としたシナリオとかマジぱねえっす。

読んだのはガガガ版の1巻だけ。
あとは目眩のするような厨二ネーミングと設定厨っぷりが見所。
ただ、設定厨なのはいいけど読者向けの説明台詞が残念。
ブリーフィングなどの必然性のある説明か、会話の節々から匂わせるような表現にしてほしい。
物語としては普通のエンターテイメント。
グロいらしいという前評判を聞いていたから、どの程度の表現まで許されるのかというのが興味の対象だったが、1巻では全然グロなかったー。

「咒式は科学だ。魔法じゃない(キリッ」
「ピンチになったからって都合よく覚醒したりしない(キリッ」
という説明はあるが、咒式とやらがそもそも質量保存則やエネルギー保存則を平気で無視しまくってるのは変わりなく、よくわからない理屈は提示されているが、肝心の「どこまではできて、どこまではできないのか」が不明瞭であるため、主人公がピンチに陥っても「まあなんとかなるんじゃないの?」って冷めた視点を 拭えない。

主人公らの冗談やら軽口のセンスも物理的に大絶滅。
うん、こんな感じ。「物理的に無理」「量子的に未確定」「論理的に信じない」とか、なにが物理的でなにが量子的でなにが論理的なのかわからない言葉遊びがちらほら。それ言いたいだけやん!
このへんが悪い意味で厨二くさい。逆にいえば、中学生・高校生にはめっちゃ受けそう。
このあたりの文章表現はかなり引っかかるものがあった。

メートルを「メルトル」と言い換えるような、可能なかぎりオリジナルな架空世界をつくりたいという思いや、厨二ネーミングと化学オタ※っぷりと設定厨っぷりは光っているのでもしかしたら次巻も買うかも知れないと思わせるだけの作品ではあった。
でもグロがないんじゃなー。スニーカー版買おうかなー。幼女が輪姦解剖されるらしいんだけど。
(※化学は詳しくないので記述が正しいのかはわからない。教科書の内容をただ書き写しているだけにも見える。)


『撲殺天使ドクロちゃん』
対象年齢小学生~中学生かな。
話の内容はさっぱり理解できないけど、キャラが暴れてるだけできゃっきゃするようなお年頃には楽しめるのだろう。


『問題児たちが異世界から来るそうですよ?YES! ウサギが呼びました!』
同上。試しにググってみたらやばいものを見つける。

(;・3・)!?

い……いや、落ち着け。このスレに書き込んでるのはみんな小学生か中学生なんだ……ならば絶賛はおかしくない……。
「問題児」って言葉が前に出すぎててどのへんが問題児なのかよくわからなかった。
なんだかんだ綺麗に世界のルールに収まってるお利口さんじゃない。
あと、僕の読解力と集中力が足りなくてキャラの把握と話の理解がさっぱりできなかった。


『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』
まったりと30分で読み終えた。
ラノベレーベルで出てるわけじゃないからラノベってわけじゃないと思うけど、読んだので一緒にレビュー。
内容は予想の範囲内を一歩も超えない教科書みたいな内容。
キャラも全然立ってないし、山も谷もないストレスフリーのサクセスストーリー。
小説として、というよりドラッカー入門として売れちゃったということなのだろう。
話としてはつまらなくもないけど面白くもない感じ。「売れる」というのはこういうことなのか。
発想はたしかに面白い。「日本の高校野球の女子マネって『マネージャー』じゃなくね?」という問題提起は有意義だと思う。
ただ、ドラッカーって読んだことないけど作中の引用見るかぎり抽象的な精神論ばっかじゃん。
この作品もドラッカー原理主義になってるとこがあって、「え? それは甲子園出場に関係あるの?」みたいなとこまで忠実にドラッカーの記述を守っていたり。

また、紹介されているアイデアがどの程度画期的で実際的なのかは野球を知らないのでなんとも。
「ノーバント・ノーボール作戦」「エラーを恐れない」がメインか。
ちょっと調べてみると、やっぱりこういう評価みたい?
野球ファンにとってはやっぱり「なんじゃそら」なとこのあるフィクションなのかなあ。
野球をよく知らない僕にとってもあまり説得力の感じられる話ではなかった。


『黄昏世界の絶対逃走』
読んでて不快感を覚えるレベルでつまらなかった。

簡単にあらすじを紹介すると。
《黄昏》というやばい病気が世界中を覆っている。これに罹ると鬱っぽくなって自殺してしまう。
それに対抗するため《黄昏の君》という装置があって、女の子が《黄昏》を吸い取ってくれる。
「なんで女の子なの?」ってあたりは当然の疑問で、きっと説明される伏線だと思って読み進めていたがいつまでたっても説明されねー!
いや、一応なんか申し訳程度に説明はあったよ。でも、そもそも人間である意味もよくわからないし、というか《黄昏》ってそもそもなんなの。ウイルス性、というわけでもなさそう。人が吸えば減るものなの。
SFのようななにか。SFならもっと納得のいく説明が欲しい。
世界の命運が関わる話なら最低限技術的背景と政治的背景の描写は必須じゃないかな。
「メインはそこじゃないんです!」と主張するなら、そのへんを関心から逸らす描写力が欲しい。

主人公は何でも屋。依頼者はかつての《黄昏の君》の回収を依頼。
今は13人しかいないから限られた特権階級しか《黄昏》を回避できないけど、1000人くらいいれば世界中の人が助かるよ! という計画を自称革命家の依頼者は打ち立てるが、そのためにヒロインを研究対象として、道具として扱って解剖とかしちゃうよ! といわれて、主人公がぶち切れ愛の逃避行。
('A`)またこんなんか……。

あと、この作品に限った問題じゃないけど「議論になるのが面倒だから黙る」みたいなのあるよね。
これも会話のテンポが悪いタイプの作品
「彼が言ってるのは正論なのはわかるが」みたいなことを地の文で書くんだけど、なんでそれ発言しないの?
「あなたの言ってることはたしかに正論だが、しかし~」みたいに発言して議論すればいいじゃん。
それをするのが面倒だから口に出さない。議論もせずに実力行使。頭が弱すぎる。
「1000人を犠牲にして世界を救う」って、すっごいありがちなテーマだけど、議論膨らませようとすればいろいろできるはず。なんかもう食傷気味なとこあるけど。
でも、「世界の命運を握る女の子と旅がしたい」というのが大前提にあるから議論なんて死んでもしたくないんだろう。
それならそれで主人公をいい意味でキチガイにしてくれないと納得いかぬえ。



総評:
ラノベってもいろいろあるなあ。一人称ドタバタハーレムものばっかりだと思っててごめんちゃい。
一番面白かったのはこの中だと『されど罪人は竜と踊る』かな。厨二が巧く昇華されている作品でした。
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