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あえばさんのブログです。(※ブログタイトルはよろぱさんからいただきました)
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writer:饗庭淵 2024-11-23(Sat)  
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『さよならペンギン』
writer:饗庭淵 2011-02-23(Wed) レビュー・感想・紹介 
まず言いたい。
量子力学ぜんぜん関係ねー!!

はい。
わたくし「SFにとって量子力学ネタは地雷」という自説を持っていまして。
んで、「エヴェレット解釈」や「シュレディンガーの猫」というキーワードが現れたらかなりやばい。
この小説はその説をさらに強めるものになりました。
ハッキリ言って、SFというよりは量子力学の用語を借りて「確率」「観測」だのをこねくり回した言葉遊びでしかない。

つまり、量子力学における「観測」についてかなりありがちでわかりやすい誤解をしている。
人間の認識とか解釈とか主観とか脳とか一切関係ないからね?
ミクロスケールでは観測という行為そのものが観測対象に影響を及ぼしてしまうので正確なデータをとることが原理的に不可能だという話であり、観測者は別に人間でなくてもいい。
量子力学とSFの相性の悪さはそこだ。
SFも文学である以上、基本的に主人公は人間であり、マクロスケールの話になる。
量子力学は人類とはおよそ縁のないミクロの話であり、物語には絡みようがない。
ミクロスケールでの不思議現象をマクロに輸入しても言葉遊びにしかならない。
マクロでも壁に衝突し続ければ、いずれはトンネル効果によりすり抜けられる。
しかし、確率が低すぎて宇宙の寿命が足りないのだ。
量子暗号とか通信とか、技術的・工学的なお話ならSFとして採用可能だとは思うけど。

あと、不老不死をSFで扱うならせめて老いの原因に関する仮説「エラー説」と「プログラム説」には触れてほしかった。
テロメアがどうとか言えばなんちゃってSF不老不死の完成というのもまた飽き飽きだが、この作品はそこにすら至らない。
作中で説明されている理屈はわからないでもない。
「死ななかった」から「死ななかった」というトートロジーめいたお話。
たしかレムで似たような話があった。
過去に遡り「自分の生まれてくる確率」を計算すると限りなく0というジョーク。
だが、「起こってしまったこと」が「起こる確率」は100%だ。
わかる、わかるってばよぉ……でも、具体的にはどういうことなんだってばよ?!
「エラー説」と「プログラム説」のどちらを採用するにせよそのへん絡んでくるはず。
それ以前に1500年生きたって設定になんの厚みも感じられない。
いままでいろんな歴史を見てきたというエピソードをもう少し入れてもいいと思った。


問題はそれだけじゃない。
テキストがひどい。
会話のテンポが悪すぎる。
「あ、ああ」「はい」「うん?」「はは」「そう」「ね?」「そうだな」「ごほん」
1ビットにも満たないような生返事が一行も占有するなんて!
リアルじゃ確かによくあることだが、小説ではノイズでしかない。
たとえばだ。
「え? ごめんもう一回言って」
リアルなら単に聞いてなかった、相手の発音が悪かったというだけかも知れない。
でも小説でいちいちこんなの再現したりはしない。
小説でこれをやるからにはなにかしら意味があると勘ぐってしまうのが普通だ。
わざわざテンポを殺いでいるのだから。
それをいちいちいちいち再現してるようなもの。そして明らかに意味はない。

会話のテンポが悪い原因は他にもある。
○○はにっこり微笑みながら言った?
これもまったくどうでもいい情報だ。
ご丁寧に毎度毎度、それやらないときが済まないのか。
話し手の表情なんてのは台詞の内容と文脈からこちらで脳内再生するんで逐一説明してくださらなくて結構。
明らかに不釣り合いの表情とか、そういうのを強調したいときだけで十分。
ページ数稼ぎなのだろうか? ラノベ並みの情報量の少なさ。
天気の話を延々とするみたいに会話が進まないからイライラして仕方がない。
このへんでなんど読破を挫折しそうになったか。
レビューでボロクソに叩きのめすことだけをモチベーションになんとか読み終えた。
レビューするからには、最後まで読むのが最低限の道理だからね……。

そして最後になるけど。
「ペンギン」の意味、欠片もないよね? なんの必然性もないよね?
最後の方の展開とかもうどうしようかと思ったよ。
宗教学的・民俗学的考証を並べられても困ったが、安心のクオリティ、そんなものは一切ありません!


SF設定。話の構成。展開。テキスト。オチ。
なにからなにまでパーフェクトに褒めるところがない。
大変な地雷を踏ませていただきました。


さよならペンギン (ハヤカワ文庫 JA オ 9-1) (ハヤカワ文庫JA)

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